高嶋哲夫さんの、長編小説。
衆議院選挙での圧倒的な勝利、
その結果として、比例名簿の末席に名前をのせていた大場大志は
民有党の衆議院議員になる。
前回の民主党、前々回の自民党で、現実にも見られたこと。
大学を卒業後、仕事もなくアルバイトでなんとか生活していた大場大志も、
現実と同じく、志をもって議員を目指したわけでもなく、
信じられないくらい楽で、高待遇な国会議員の立場を喜びながらも
次第に戸惑うようになる。
そこまでは現実と同じ。
この小説が、現実と異なるのは、
高校時代の友人や自分の家族、
かつて志をもっていた古参議員や、議員秘書、
官僚に、新聞記者、
周りの人間とのかかわりの中で、
何かを変えるべきだと考え、自分の保身を省みずに行動を起こすこと。
ちょうど、東北関東地震の起きる前に1/3くらいを読んでいた。
震災後、しばらくしてから残りを読んだ。
何かをやる男、
経歴も能力も見透かされていた中で、
周りの人間は、大場大志について、そんな感想をもっていた。
人の意見を聞けること、
自分の能力の欠如を認められること、
主人公に協力をはじめる人間たちの気持ちは、読者の私にも共感できた。
物語には、すごく希望を感じる。
政治家というは、こういう行動ができる人間だけがなるべきだ。
感想は複雑、
物語は結局物語・・で終わるようなら絶望的、
現実も、
たとえば今回の大震災の経験を踏まえて
政治家、有権者共に自己を省みることができるなら、
希望につながる。
有権者の責任も、重い。
政治に無関心でいることは、もう許されない時がきたのだと想う。