市川拓司さんの長編小説。
プロローグは、
27歳で結婚式を迎えた主人公:芳川美紗、
かつて先の知れない不治の病をかかえて、二十歳まで生きられないと
諦めていた少女の17歳の初恋が、この物語の始まり。
切なさや、はかなさは、市川作品のエッセンスそのものだけど、
そこに、特殊な性質を受け継いでひっそりといきてきた人びとを
絡ませたのが本作。
中世のヨーロッパでなく、現代の日本でこの物語がむりなく成立するのは
市川拓司さんならではの、よわきものへのやさしい視点のためですね。
心を通わせた二人の別れと、
そしてエピローグ、
恋愛ものだとするなら、Happy Endといえるのかな、
というところがせつなくて、またよし、です。