不思議な小説。こんな物語だとは思わなかった。
語り手であるパパ:岸田弘が
息子:弘海にむけて語りかける手紙の形で物語が進む。
ママ:真由美、妹:美和
そして友達:公太
やわらかく、やさしい市川拓司の世界は健在。
というよりも今まで読んだ本「いま、会いにゆきます」や
「そのときは彼によろしく」
と比べても、際立つくらい。
そのナイーブさが、不快にならないことの不思議さに
あらためて気づいた。
以前、市川拓司さんのインタビュー記事を
新聞で読んだことがあるのだけれど、
ある種の痛みを知っている人間が
やさしくなれる強さがある、ということだろう。
作家として、とても貴重なスタンスだという気がしてきた。
ただよう喪失感の中で物語が進んでいって
そして市井里沙との出会い、
昔読んだジュブナイルのような懐かしい驚きがあって、
最後、
こんなHappy Endを予感させるエピローグで終わったのは
嬉しい誤算だった。
できれば、ちゃんと再会の場面を読みたかったという気持ちも
あるけれど、これでいいのかな。
ちょっと癒されました。