road2vのブログ - a little white rooster

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「透明人間の納屋」島田荘司/講談社

少年少女のために刊行された”ミステリーランド”の一冊。

凝ったつくりの装丁や構成、表紙、
このシリーズを企画したひとの思い入れが伝わってくる。

少年時代に、読書のめくるめく楽しさを知れば、
その後も、本は喜びと多くのものを与え続けてくれると思う。
こういう試みは、応援したい。

一流の作家が、渾身の力をこめて書く価値が
ジュブナイルにはある。
(少年時代に読んだ日本のSF作家たちのジュブナイルは本当にすばらしかった。)

島田荘司さんが、書き上げたこの小説も
渾身の作品だと思った。
できれば、少年の頃に読みたかった気もする。

島田作品ならではの、不思議な事件が起こったのは
昭和52年の夏、主人公の浦上ヨウイチ少年は9才だった。
偶然にも私と同じ年?というのも、物語の臨場感を高める効果があった。

子供の頃の記憶は結構、鮮明に残っている。
周りの大人の言ったことや、行動が子供の記憶の中では
想像するより大きなものであることは実感としてわかる。

ヨウイチ少年にとって、真鍋さんと過ごした日々の輝きは
いかほどのものだったかと思う。

そして26年後、成長してサラリーマンとして東京で働いている
浦上ヨウイチの前に、真実が届けられる。

しんみりとした、軽い痛みが残る結末。

あの夏の終わり、最後に見送りに間に合って良かったと、
心からそう思う。