road2vのブログ - a little white rooster

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「写楽 閉じた国の幻」島田荘司/新潮社

島田荘司さん、待望の新作長編。

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今まで読んだ本(小説)の中で、何が一番か?

そう問われれば、
ジャンルや読んだときの自分の状態(年令や気持ち)によって
いくつもの本が浮かんで、答えなどだせないけれど、

『あれは、本当におもしろかった・』と
読みながら、嬉しさ・喜びが心身から湧き出るような、
そんな読書体験の記憶がいまだに残っている本が何冊かある。

江戸川乱歩賞受賞作、作家としてのデビュー作にもなった
高橋克彦さんの「写楽殺人事件」は、その中でも筆頭にあげられる1冊。

江戸時代、
他の誰とも違う作品で、鮮烈にデビューして
わずか10ヶ月で忽然と消えた絵師、東洲斎写楽

当時、18才の頃、
その名前と記念切手「市川蝦蔵の竹村定之進」(カバー表紙にも使われました。本作でも。)
を知るのみで予備知識は皆無だったけれど、
その謎の多さ、不可解さ、
写楽別人説の魅力にぐいぐい引き込まれました。

"邪馬台国の謎"や"義経北行伝説"と同じく、
どこかで新作を見つけると、追いかけずにいられないジャンルになりましたが、
遠い昔とはいえない江戸時代も後期:1794年(寛政六年)のこと、
版元・蔦屋重三郎はじめ、歌麿、春朗(葛飾北斎)、あまりに有名な
歴史上の人物がかかわるなかで残されてきた歴史上の謎に、
あらたな新事実の発見がそれほどあることもなく。。
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あの写楽を、島田荘司さんが手がけた?!

高まる期待と一緒に、いくら島田荘司さんでも・・という
自分を抑える気持ちの中で読み始めました。

・・・

・・・

・・・

おもしろかった。

奇跡的な事実(史実)の連鎖の中に浮かび上がる
30年ぶりの完全な回答。

今年の、否この数年間で、最も価値ある作品になりました。


# 図書館で予約して、読んだのですが、
  自分でも購入したいと思いました。
  (読んだ後で、なお所有したくなる、そんな本です。)
 「写楽殺人事件」始め、高橋克彦さんの浮世絵シリーズも
  読書後、またはシリーズ新作刊行時に購入しました。
 
余談ですが、この経済的に苦しいご時勢、
しぼりに絞って購入しようと決めた作品が買えないのが、
今の日本の電子書籍ブームの現実です。
来年、再来年は、所有したい本が買えるようになっているのかな?
{紙数の関係で、島田荘司さんが掲載を諦めた英蘭語資料の
 和訳など、ページ数増を苦にしない、(本書は、その紙数もあり2500円です。)
 電子書籍のメリットが最大に生かせると思うのですが。
 新潮社の方、ぜひ電子書籍での出版をご検討ください。お願いします。
 そうなれば、iPADガラパゴス、買いますよ。}


高橋克彦さんの「写楽殺人事件
{本作の中では、
 おなじく高橋克彦さんの「北斎殺人事件北斎隠密説も、
 重要な時代背景説明として紹介されています。}
そして、本作をこれから読める人は幸せだなと思います。


本作は、連載の形をとることで、島田荘司さんが
自らに科すかたちで、スタート・出版にこぎつけた経緯があったと
あとがきに書かれていますが、

そこでも語られているように、裏面のストーリーが
まだまだ語られずにいます。
謎の肉筆画、片桐教授に、回転扉事故裁判の結果・・

写楽 閉じた国の幻II」が、書かれることを
本当に楽しみに待っています。