萩原浩さんの新作長編。
表紙の絵は、氷雪の荒野に立つ少年の後姿。
ひとりぼっちで肩からバックを下げて遠くをみている。
TVの新作紹介で取り上げられていたので興味をもった。
(萩原さんの仕事場紹介もされていて、興味ぶかかった。)
書名から、そして簡単な解説から最初に想像していたような、
少年の心に焦点をあてたような小説とはちがっていた。
父親がいない、回りの人間とは変っていることを
自分はクロマニヨン人の子供だと考えるワタル(南山渉)少年。
母親と一緒にデパートの屋上に行った最初の記憶から、
幼稚園の頃、小学校、中学校、そして高校を卒業するまで。
物語は、ワタル少年の日常を、周りとの軋轢や
自身の成長や、変っていく周囲の反応など
丁寧に綴っていく。
初めてできた友達といえる存在や、恋心、
陸上、槍投げへの傾倒。
抑えきれない衝動のようなもの。
サチ(室田紗知)との微妙なやりとりは、ちょっと懐かしさも覚えた。
ひとつの街で、成長して生きていくというのを
ワタルの目線を通じて体験したような感じだった。
もちろん、普通じゃないことをワタルは経験するのだけれど、
まだ18歳で、そしてこの小説の後も彼らの人生は続いていく。
こういうタイプの青春小説もありなのだと思った。