road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「千年樹」萩原浩/集英社

こぼれ落ちたくすの実から、育った樹齢1000年の大樹。

そのくすの木のそばで繰り広げられる人間たちのドラマ、
9世紀から現代まで、コラージュのように配された短いストーリーで
時代がカットバックしながら物語がつづられる。

中心となるのは、かつて幼稚園舎があった頃から、この街で育った
現代の主人公たち。
(若者という印象があったけれど、最終章には40才を超えているから、
私とも近い世代の過去を振り返る形にもなっている。)

萩原さんの作品は何作も読んでいるけれど、本作もまた新しい構成に
挑戦している。

1000年の寿命を誇るくすの木に対して、人間たちの生きる時代は
驚くほど変っていって、ある種の無常観のようなものを感じた。

「四度目の氷河期」もそうだったのだけれど、なんということない地方の小さな街で
生まれ、育って、恋して結婚して、そしてそこで年老いていくという人生が、
ひとつの隠れたテーマになっているような気がする。

私自身は、生まれ故郷を離れたし、就職を期に少年時代からすごした街も出て
東京で働いて、住まいも幾度も変ってきた。

だから多くの記憶は鮮明で、そのときの感情や感覚も残っているが、
時々、想像することがある。

生まれた街でずっと育っていたらどうだったろう?

近所の幼馴染と一緒に成長して、友情に恋に、進学や就職、
今とはまったく別の人生を生きていたのだろうね。

親の転勤で移った街で、もし生まれていたら、
故郷としての街をどんなふうに感じていたのかな・とか。

そういうことを改めて思いました。