road2vのブログ - a little white rooster

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「通天閣」西加奈子/筑摩書房

西加奈子さんの本を読むのは「さくら」に続いて2作目。

大阪・通天閣の近くで暮らす
歳も立場も、生き方もことなる二人の男女。
それぞれの生活と視点が交互に切り替わって
物語が綴られていく。

44才の男の方の、生活とか、
ちょっとあこがれてしまうところがある。
豊かではないし、目的や夢があるわけでもないけれど
働いて、飯が食べられる、
それで十分だなというふうに時々思う。

恋愛の痛みを引きずっている女の方は、
読んでいて痛々しい。まあでも、
幸せ感というのは、本当にわずかなシンプルな
ものによるのかもしれないとは思った。

ちょっと疲れているときに読むと、
そんなにがんばらなくてもいいじゃないかと
共感するような、そんな味わいのある小説。

(各章の頭に、短い文章が配されていて、
何かを示唆しているようなのだけれど、
幻想的なイメージなのか?
私には、よくわかりませんでした。)


通天閣には、大阪の友人に連れられて一度だけ
いったことがある。

下町のような庶民的な町並みの中で
けして広くない通りを通って見上げたその姿は
思ったよりもこじんまりしていて、身近な親しみやすさがあった。
たまに映像のなかで観るときも、その時の印象は変っていない。

この小説も、通天閣でなければなりたたなかっただろうなと思う。