読み始めて、第一章を読んでいるときは
こんな小説だとは思わなかった。
中学・高校と負け知らず、
自分の出した区間最高記録を毎年ぬりかえてきた天才ランナー岡崎優。
将来、オリンピックで金メダルをとることを明確な目標として、
それ以外のこと、チームワークや部の仲間のことなど
興味のかけらもなかった。
箱根駅伝を走るということさえも、自分で引いた
マイルストンのひとつにすぎなかった。
大学1年、出走を辞退することになった箱根2区、
将来を微塵も疑うことのなかったエリート・ランナーにとって
突然ふってきた想像もしていなかったこと。
全編が、主人公:岡崎優の目線で描かれているので
望まなくても自然に岡崎優と自分が一体化していくところがある。
それだけに、”知ったとき”の衝撃は大きい・・。
序章と、そして終章、
こんなにおだやかなシーンが待っているとはちょっと意外だった。
珈琲の芳醇な豆の香りが漂うところが、想像できる。
父、母、そして兄
自分の才能、そして夢。
多くのものを失っても、残った本物があって
この穏やかなEndingは、この小説ならではの感慨を残していく。
読み終えて残ったのは、希望のようなものでした。