road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「ゴールデンタイム 続・嫌われ松子の一生」山田宗樹/幻冬舎

映画化もされた前作「嫌われ松子の一生」で、
松子の人生をふりかえる案内役をつとめた甥の川尻笙と元恋人・明日香の
4年後の青春を描いた小説。

24歳、自分にとってはもうずいぶん前の年令になるが、
夢や希望や、それにむかっての煩悶にはすがすがしい印象をもった。

半分電車のなかで読んだあと、就寝前に最後まで一気に読み終えました。
明日香が通う医大がある佐賀、笙の故郷の福岡・大川市、それに熊本も舞台として
登場するのは、嬉しいおまけ。

前作を読み終えたときは、最後、電話できた後の松子の新しい別の人生が
想像できて、それが強い余韻を残していた。
本作の中で、同じことを笙が松子の友人の沢村社長に語るシーンがあって、
救われた気がした。
(何はともあれ、校長が許せないという怒りはずっと残っているが)

二人の主人公の現在について、演劇の技術(声のベクトルのコントロール)や、
医学生の授業、ファミリー・プラクティスなどについて詳しくて、
それがこの物語の現代・現実のリアリティを高めている。

最初は山田宗樹さんの、個人的なバックボーンのせいなのかと思っていたら、
巻末に多数の参考文献が一覧されていて、
調べて、学習して、その成果が小説の完成度につながる、そんな成果だと知った。

プロフェッショナルの仕事とはこうあるべきなのだろう。

冒頭で明日香に強い印象を残す安藤加津子医師や
明日香がアメリカ臨床留学を考える契機になる兼子猛医師の話、
それに笙が出会うミックや遥太郎など、
作中のプロフェッショナルにも感銘を受けた。
見習わなくては。


物語の中盤で、明日香に友人の本堂玲子が医者になりたいという動機を語る
シーンがあるのだけれど、共感してしまった。

同じものが欲しいわけではなくて、
影響されない、侵されない強さを得たいということ。
力などなくても、そうなれれば良いのだけれどね。