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「帝都衛星軌道」島田荘司/講談社

島田荘司さんの最新作。

帯に「正直言って、自信作です。」という島田さん本人のコメントが載せされていたが、
期待にたがわぬ傑作だった。

前作「摩天楼の怪人」は、1900年代初頭のニューヨーク・マンハッタンを舞台にした
ぺダンティックな魅力にあふれた小説だったが、本作では帝都・東京も負けない
魅力的な素材であることを証明してくれている。

前編・後編に分かれた「帝都衛星軌道」の間に「ジャングルの虫たち」が挟まれた構成。
初出一覧をみると、
「ジャングルの虫たち」が2004/5、「帝都衛星軌道」が2006/1と
ずいぶん時期が離れている。

全くことなる物語を交錯させて、世界観を広げるのは島田作品の十八番だが
本作でも効果的に成功していると思う。
「帝都衛星軌道」の前・後編で、東京・長崎そして6年の時間とさらに30年前への
時間を越える舞台転換の間をつないでいる。


「秋吉事件」や「都市のトパーズ」、島田荘司さんの死刑制度への取り組みや
都市論など、今までの成果も取り込まれた、島田荘司ファンには懐かしさも感じられる
作品になっています。

大江戸線には何度か乗ったことがあるけれど、
特に終盤の"帝都衛星軌道”についての言及には、圧倒された。

ラストシーンもまた、少し泣けました。

<Yahoo Booksの島田荘司さんインタビュー> 読後に読むと良いです。07/17/2006
http://books.yahoo.co.jp/interview/detail/31717509/01.html