幸田真音さんの長編小説。
中堅の証券会社:谷福証券の創業社長 谷山福太郎の社葬の場面から
物語が始まる。
新卒入社の頃から福太郎にかわいがられ
強い信頼を受けてきた財務部長:深田道夫が主人公。
生前の福太郎から”あること”を頼まれた後の突然の逝去。
堅くてまじめで、お金や出世にはこだわらない、
こつこつと誠実に勤め上げてきた、
そういう主人公の設定が、
この手の経済小説の中では異色で
ストーリーに引き込まれていく。
もう一人の主人公は東京国税局、調査部国際税務専門官:宮野有紀。
離婚して、娘いづみと、母千鶴子と暮らしている。
悩み考えながらも、仕事に対して真摯に取り組んでいる
彼女と深田が知り合って、物語がまた動き出す。
福太郎の死後、遺産や権力をめぐって動き始める
入婿:順介に、一人娘:玲子。
深田の回りで巨額の投資資金に絡んで
謀をめぐらす坂東や稗田明日美。
いわばありふれた周囲の動きの中で
深田や宮野有紀の価値観が、
ゆるがないところが魅力的だったのだが。
しょうがないのかも知れないが、もっと別のEndingも読みたかったと思う。