東京第一銀行 事務部調査役:相馬健、
そして、その部下:狂咲(くるいざき)こと花咲舞(はなさきまい)
営業課の事務処理に問題をかかえる支店を個別に指導し、
解決に導く、臨店を主な仕事とする、
二人が活躍する連作短編集。
銀行内外のさまざまな問題、人間関係、野心やかけひき、
それらが巻き起こす事件がひとつひとつのエピソードに
なっている。それはいままでの多くの作品と同じだけれど、
相馬と花咲の二人が、今までの主人公と違って
普通の(といっていいのか)感性をもったまま行動するところが
新しかった。
閉じた組織の中では、往々にして、世間の常識とは異なることが
普通のこととしてまかりとおってしまう。
狂咲といわれながら、しごくまともな感性の花咲舞と、
その行動にやきもきしながら、なんとか調和をとろうとする相馬。
こういう主人公を設定することで、
今まではどこまでも恥知らずの悪役(?)として描かれていたような登場人物たちも
それぞれ人間らしさを垣間見せるシーン(「彼岸花」「不祥事」)があって、
花咲の活躍とあわせて楽しめました。