road2vのブログ - a little white rooster

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「一応の推定」広川純/文勢春秋

2006年、第13回「松本清張賞」受賞作。

【一応の推定】理論とは、

生命保険契約法の判例において、自殺の立証について適用される理論。


主人公:村越努は、保険調査事務所の嘱託調査員
定年をまじかに控えた年始に、ひとつの轢死の調査に携わる。

この作品を手に取るときのKeywordは松本清張賞・受賞作であるということ。

私にとっては、日本人作家の推理小説としては江戸川乱歩横溝正史より早く
読み始めたのが松本清張さんだった。

小学生高学年の夏休み、父親が何冊か持っていたカッパノベルスの作品を
読み始めて、一気に読み終えた。
当時読み始めていたシャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンとは
ちがう世界に当時かなり惹かれた。
子供だったので背伸びしたい気持ちも強かったのだと今は思う。

社会派推理小説というジャンルも、今はかえって新鮮な響きすら感じるなかで
松本清長”らしさが十分感じられる作品でした。

派手な事件も、連続殺人も起きるわけでなく、
調査員:村越の実直・丁寧な調査が真実の姿を探り出す。

個人的に、主人公が好きになれたのは、
長年積み重ねてきた経験に裏打ちされたプロフェッショナルとしての誇りと
先入観をもたない誠実な取り組みぶり。

仕事を続けていくということには、生活の糧を得る以外に
なにか意味をもたせたいという気持ちがある。

定年を迎える頃に、そこに確かな個人の人格のようなものが
確立されていたなら、
幸せな職業人生を送れたといえるのではないかと思った。