road2vのブログ - a little white rooster

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「ミーナの行進」小川洋子/中央公論新社

2005年2~12月にかけて読売新聞に連載された、小川洋子さんの小説。

著者初の新聞連載小説だということ。

おそらく土曜日の連載時に添えられていたと思われるカラーの挿絵の数々が、
懐かしい雰囲気をかもし出していて心地よい。
(新聞連載小説の良いところは、この挿絵が残ることかもしれない。)

先日8/24に第42回谷崎潤一郎賞を受賞した記事が、読売新聞で
少し大きめに取り扱われていました。

主人公、朋子が神戸・芦屋の親戚の屋敷ですごした1972年の短い一年間の物語。
従姉妹のミーナやコビトカバのポチ子とすごした印象的な日々。

新幹線の大阪・岡山開通や、ミュンヘンオリンピックの日本男子バレー金メダルなど、
主人公の周りの風物は、私の子供の頃の記憶に重なる部分も多かった。

主人公は私より5歳上の設定なのだけれど、小川洋子さん自身と同じ年令のようだ。
個人的な見方や思い出が反映されることで、特別な物語になっているのだと思う。

読売新聞記事より、
「初の新聞連載で、初めて特定の年代に取り組んだ。
冒険した作品が認められ、うれしい。」と語っていたとのことです。

かつてのフレッシー動物園の猿のサブロウの死の場面には、
ちょっとうるうるしました。

そしてポチ子との別れ、
米田さん、ローザおばあさん、
いやおうなく時間は過ぎていくことの寂しさが印象的でした。

小説の最終章で、
30年以上すぎて成長したミーナからの手紙と、
朋子の返信の中に近況が書かれて、
物語が、現実の続いていく人生とリンクしました。

単なる追憶のメルヘンで終わらせないところが、
嬉しかった。