福井新聞に1989年7月から連載。1990年に刊行された小説。
題名のひびきに惹かれて、借りてみました。
物語の現在は昭和5?年、
新興ペイント会社の敏腕セールスマンから転じて、自らの会社を
起こした社長が20数年後に迎えた会社の危機。
天職であると思えた教師の職を辞することを決めた
その親友である男。
長年の友人関係にある二人の壮年男性が、
各々人生の転機を迎えてその転換点となった
事件を振り返るというストーリー。
いわゆるメジャーな作品でないし、読むのにも時間がかかった。
途中、共感できない部分にいらいらしたりもした。
作者の意図したものとはちがうかもしれないけれど、
主人公たちが自分の属する世界の中で行動や考えを限定されている様を
客観的にながめられることが、小説を読むことで得られる価値であると
思った。
実際に多くの経験を積むことはもちろん大切なのだけれど、
人とのかかわりの中で自分自身の視野を狭めていくような順応をしてしまう部分が
あると思う。
読書は、自分のペースで読み進められることもあって、
客観性を保っていられる。
これは重要な点だと改めて心に留めておきたい。