2005年江戸川乱歩賞受賞作。
出版されてすぐ買ったのだけれど、乱歩賞には強い思い入れがある分、
心にゆとりのある時にゆっくり読もうと思っているうちに
ずいぶん時間がたってしまった。
少年犯罪と贖罪というテーマに沿って丁寧にストーリーが構築される。
こういう事件を描くとき、最近のクライムノベルでは強烈な表現が
多用されているけれど、本作では主人公の性格にふさわしく控えめで
堅実?なトーンで統一されている。
幾重もの仕掛けがあり最後に至るまで考え抜かれた緻密な構成と仕上げとあわせて、
それは本作の質感を高く保つことにつながっていると思う。
ただし、正直読み終わって期待するカタルシスは得られなかった。
選んだテーマからくる必然ではあるのだろうけれど..
真面目に考えてしまうと、昇華するのは難しい。
ハッピーエンドがすべてとは思わないけれど、
推理小説が基本的にもっている犯人逮捕や事件解決からくる
安堵や救いの感覚はもっと欲しかった。
次作に期待します。