第55回 江戸川乱歩賞・受賞作。
千葉・市原交通刑務所の収監者が殺される事件が起きる。
詳細な刑務所内での行動の描写から始まる小説、
舞台としては、心地よい選択ともいえないし、
語り手の視点の変わっていく書き方などはよみにくさもあるのだけれど、
どうなっているんだ・・という謎への興味にひきつけられて、
最後まで一気に読まされてしまった。
読了後も、あれはどういうことだったのか？と思って
何度も読み返したり。
本書の最後に、江戸川乱歩賞の選評が載っていて
本作は、欠点と指摘された部分を加筆・修正されたものなのだけれど、
原型の部分は、そのまま残っているのだと思う。
解決のカタルシスが十分とはいえないラストシーンを含めて、
傑作！と素直にいえないところはあるのだけれど、
この数年の乱歩賞受賞作でなかった、
謎の提示と解決という推理小説ならではの醍醐味をもった
熱意のある作品であるのはまちがいない。
遠藤武文さんの次回作がどんなものになるのか？
期待している自分がいます。
