貴志祐介さんの長編SFファンタジー小説?!
大長編、上下巻に分かれた分厚いハードカバーで、
正直最初は、読み始めるのにハードルがあると感じていた。
主人公は、語り手である:渡辺早季、
倫理委員会の最年少議長に選ばれた彼女が、
10年前におきた悲劇を、その背景を含めて振り返る記録の
形で物語が語られる。
真理亜、守、
覚、俊の5人は、小学校からの幼馴染
呪力の目覚めを意味する祝霊の訪れを契機にして
全人学級に進む。
ファンタジーだから、その世界独自のルールと世界観が存在していて
彼らの世界の生態系だったり、日常の習慣、行事が説明される前半は、
その緻密さや作りこみには
感心するものの、まだ新しいファンタジー世界への抵抗感をもちながら
読み進めていた。
そこでミノシロモドキの登場。
早季たちに明かされる、封印された歴史。
バケネズミの集落間の争い、圧倒的な力:呪力で君臨する人類の存在。
何故、大人たちはこれほど”恐れていた”のか?
細かなパーツがひとつひとつかみ合って、
緻密な現実感をともなった恐怖を構成していく。
おもしろかった、というか圧倒されて最後まで読み進んだ。
この小説はすごいと思う。
ファンタジーの形を借りているけれど、
実際は、ハードSFのカテゴリに入る小説かもしれない。
人類が呪力を手に入れた世界、こんな切り口があるとは
思わなかったな。
ぜひ、御一読を。