池井戸潤さんの長編小説。
銀行を主舞台にする一連のシリーズからは離れて、
「飛ぶタイヤ」に連なる社会派小説の新作。
主人公は、中堅のゼネコン一松組の若手社員:富島平太
入社以来配属されていた現場から、
業務課への転属を告げられる。
影で公然と談合課とささやかれる部署。
最初にかかわる公共工事の入札から、
平太は、”脱談合”というスローガンと現実の姿のギャップに戸惑うことになる。
そして物語は、総額2000億円規模の地下鉄工事の大型入札案件。
限界を極めるコストダウン・・
同郷、母親の知り合いでもある大物フィクサー:三橋との出会い。
取引先の銀行に勤める恋人:野村萌、
一松組をひっぱる凄腕の常務:緒形、
その仕事ぶりで平太を圧倒する業務課の上司・先輩たち
主人公が若くて素直で純朴なぶん、
その戸惑いや、憤りなど、わかりやすい気持ちの動きに沿って
自分も物語に引き込まれていった。
現実の事件・企業の存在が生々しくて重い「飛ぶタイヤ」と比べて、
少し楽な気持ちで読めるところは、良い点でもあると思う。
平太と萌のすれちがいと、またよりを戻せそうな気配で終わるところも
微笑ましく。
楽しめました。