road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「震度0(ゼロ)」横山秀夫/朝日新聞社

事件は神戸大震災の起こった日に始まる。

N県警察本部を舞台に、登場人物であるN県警主要幹部やその家族の視点が切り替わりながら、
同時進行で物語がつづられていく。

書名の「震度0」は、TVニュースなどから徐々にあきらかになる大震災の被害の大きさと対比されて、
登場人物たちの心を占めている事件のクライマックスのあるシーンを象徴する表現として使われている。

正直、組織の中での力関係による軋轢やかけひきは避けられないものなのかと思うと
途中いやな気分になった。
物語中、登場人物たちはそれぞれの過去や経歴にもとづいて、行動や判断を決めていく。
新しい展開が起こるたびに、そのひとつひとつの舵取りが彼らのエゴをむき出しにしていって
最初のわずかな差が取り返しのつかないものに変わる。

いくところまでいって、おそらく取り繕ったり、対面を気にする余裕もなくなったときに、
物語は最後の救いの希望を提示して終わる。その希望は、私には確かに感じられた。

それは、物語ゆえのご都合主義ではなくて、実際に社会で多く起こっていることなのだと思う。
家族や友達とのかかわりの中で培われた信念が、組織の中で
押さえつけられ捻じ曲げられることがあるなら、自分がそれに対して
まだ戦える気力や能力を保っているのかは、いつも意識していたい。
だめだと思ったら、辞めるのは悪いことではない。


# 地震について
物語の冒頭で、神戸地震の震度が6と知って登場人物が衝撃をうけるシーンがある。
震度5震度6の間にはそのエネルギーレベルにおいて1トン爆弾と原爆ほどの差があるらしい。
日頃、震度3程度の地震にはかなり慣れてしまっているが、大地震になればそれとは次元の
違うレベルの破壊が起こるのだと再認識した。

最近のマンション耐震強度偽装問題は、実際に大地震を体験したひとたちには
まったく違うシリアスさで見えているのだろう。