これは世間をまきこんで大論争にもなった「青色ダイオード」特許紛争の背景について、
別の立場・視点からかかれた本。
著者はスタンレー電気退社後1993年2月に日亜に入社、技師長に就任している。
青色LEDの実用化が1993年11月だからその前後をまじかに見ている。
事業としての青色LEDおよびその後の青紫LEDや白色LEDの展開の部分は、とても興味深かった。
実際に日亜科学が、地方の優良企業から世界的な企業へかわるこれらの成長はここ10年ばかりの
最近の出来事なのだと思うと身近に感じる。
著者の主張している認識は、共感できるところがある。
断っておくと、私は中村修二さんの行動や言動には尊敬の念や親近感をもっており、
本人が書いたものを含めて中村さんについて書かれた本はほとんどを購入している。
中村さんへの著者の視点は、ニュートラルなものかなと思う。節目となる時期に
直接交わした言葉のいくつかが本書では紹介されているが、それらは他の本には
載っていない。
窒化物研究所所長への就任にかかわる認識のずれが、
本質的な今回の別離の原因だったのかと思う。
中村さんの認識とは大きく異なっている。
科学技術振興事業団(JST)のERATO(創造科学推進事業)のリーダー就任要請
にかかわる経緯は、本書で初めて知った。
いずれにせよ、日本社会でのサラリーマンの評価・被評価の認識のずれは
解消されることは期待できないと思った。
だからこそ、起業した人たちはあれほどあくが強くなるのだろうけど。
(自分の認識を100%真実かつ正解にできる世界を手に入れるわけだから。)