緻密な取材に基づいた作品で知られる真保裕一さんの新作。
第二次世界大戦の勃発から終戦、その後まで。
アメリカ国籍取得の道を閉ざされた一世である両親たち、
アメリカ生まれのアメリカ人を自認する2世たちとの世代間のぶつかり、
アメリカとそして日本に対して複雑な感情が交錯する地域社会、
そしてアメリカという国における日系移民の立場。
それぞれの動機を胸にアメリカ人として軍隊に志願した
ハワイそして本土リトル・トーキョーの日系2世を主人公に、
物語は進む。
エンタティメントというには重すぎて、読み進めるには時間がかかった。
日系人の強制収用や、日系人だけで編成された部隊の存在など、
知識としてだけは、もっていたことも、圧倒的な実在感で築き上げられた
物語を読むと重さがちがった。
楽しめたとはいいがたい。
何度も煩悶する、煩悶せざるをえない立場の主人公の立場に、完全に感情移入できるわけでもなく、
ただ同じように考え、感じながら読み続けるしかなかった。
それが、おそらく現実に近いことだと思う。
戦争の終結も、取り戻した平和も、カタルシスを与えることはない。
最後に、
ジロー・モリタがハワイのマット・フジワラの実家を訪ねるシーンがある。
家族が、最後にジローに向けた笑顔のシーンが印象的。
最後に救いがあって良かった、そう思った。