1998年、「夏のロケット」でデビューした川端裕人さんの本。
以前読んだ「今ここにいるぼくらは」は、少年時代の懐かしさを感じさせる作品で、
今までの作品と毛色がちがうことが新鮮だったのだけれど、
本作でもまた新境地を開いたように思う。
「銀河のワールドカップ」という題名から、素直に本書の内容を想像できる人は、
特に過去の川端作品をよんできた人には少ないのではないだろうか?
作風や雰囲気などもそうなのだが、引き出しが多いと驚く。
元プロ・サッカー選手そして少年サッカーのコーチだった花島勝が、
失業中に公園で草サッカーに興じる子供たちと出会うところから物語が始まる。
まぶしい才能、どんよくにそして驚くべき速さで技術を吸収・成長する黄金世代(ゴールデンエイジ)。
- キャプテン翼のとは意味がちがうけど。
小学生の男の子・女の子のサッカープレイヤーが
生き生きと描かれている。
野球小説は好きで、純文学からジュブナイルSFまで多くの傑作があると思っているのだが、
野沢尚さんの「龍時」はじめサッカー小説にも最近優れた作品が増えてきたと思う。
ノンフィクションだけでなく、小説の題材としての取り上げられるようになったことが
日本におけるサッカーの位置の変化を表していると思った。
現役の海外プロ・サッカー選手の多くが名前を変えて登場するのだけれど、
(かつての名選手や日本選手は実名)、そのプレイの描写が魅力的で、
川端裕人さんは、本当にサッカーが好きなのだなと思った。
先日、明石家さんまさんがテレビで
「10年前のジダンのプレーを知らないで、ジダン引退を語るのは・・」のような
発言をするのをみたけれど、世界のサッカーを見つづけきたファンには
きら星のようなプレイの数々が脳裏に焼きついているのだと思う。
(私も、学生の頃TVで深夜に見たW杯でのマラドーナのプレイは覚えている。)
とにかく、サッカー好きな人にはもちろん、そうでない人にも
楽しめる小説だと思います。