医師であり、2004年「破裂」がベストセラーになった久坂部羊さんの新作。
先日TVドラマ「医龍」の最終回を視たが非常におもしろかった。
手塚治虫さんの「ブラックジャック」以来、
いわゆるスーパー・ドクターの活躍する話には心惹かれる。
ドラマにしても漫画にしても、次々に新作が作られるのは、
ジャンルとしてそれだけの強い支持があるからだと思う。
久坂部羊さんの「破裂」は、そんな中で医者の現実をリアルに描いた問題作だった。
衝撃的な事実、タブーである考えが確かに存在するものとして提示される。
刑法39条の存在をひとつの軸にして、物語が進む本作でも、
それは健在。
診ただけで、その人の病気をぴたりとあてることのできる医者。
犯罪を起こし得る犯因症も明確に見出すことができる。
プロフェッショナルが、明確な意識をもってのぞむことで、
ある種の神がかり的な勘のような判断力が身につくという話には
リアリティがある。
そんな新しいヒーローの誕生は嬉しかったが、久坂部さんはそこにも
また大きな限界を設ける。
ラストシーンはまた怖い。
それが魅力なのかもしれないけれど、
個人的には素直なハッピーエンドを求めたい気持ちがある。