最近はドラマでの活躍も目立つ劇団ひとりさんの初の著作。
文体も内容もさまざまな短編5編からなる処女小説集。
ずいぶん話題になっていた作品だったので、期待度が高い状態で読み始めた。
連作短編の形で、登場人物たちがさりげなくかかわりあっていくスタイルは、
あるけれど、本作はもっと積極的に多大なる影響を与えあう形で
5つのストーリーが有機的につながっていくのがめずらしい。
短編集というより、ひとつの小説として意識して書かれたのかと思う。
読了した後で読み返してみて、またよみがえる印象は不思議な感覚。
「拝啓、僕のアイドル様」、「ピンぼけな私」
小説の中の出来事が、ラストで急に身近な世界に転換される感覚。
「Overrun」のようなラストシーンには弱い。うるうるしてしまう。
「鳴き砂を歩く犬」の最後(表題の”陰日向に咲く”)も印象ぶかい。
最終ページのせりふが、何十年かの時間を越えて心にひびく。
勝ち組とか、実力主義とか、ここ数年煽り立てられるような
風潮があったが、ゆるりと自然に生きるのもいいと思わされた。
次作が書かれるとしたら
どんな小説になるのか楽しみです。