市川拓司さんの3編の中篇からなる作品集。
「琥珀の中に」
「世界中が雨だったら」
「循環不安」
以前、読んでいたと気付かずにまた借りていた。
たぶん、この本を読んだしばらく後で
「いま、会いにゆきます」や「そのときは彼によろしく」を読んだのだと思う。
市川さん独特のテイストは共通しているものの、
その小説世界はずいぶん違う。
主人公のナイーブな感性を書かせたら、
市川さんの右にでる人はいないかと思うけれど、
そのナイーブさがどんな結末につながるかは
それこそ大きな分かれ道があるのだと思った。
誇示したり、他者を押しのけるためのものではなく
強さは必要だ。
本書の作品中にも、それぞれ心にしみるような
印象的なシーンがある。歯車がうまく回っていれば、
きっと全然別の結末になっていたのではないかと思わされた。
親や、友達、こどもたちの周りの人間の影響は
大きいなと思う。
たとえば、他人であっても責任はあると思った。
ましてや肉親であるなら。