road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「ロズウェルなんか知らない」篠田節子/講談社

夜の村の明かりを描いた藍色の装丁が、いい味だしてます。

温泉もない、特別な景勝地もない、
スキー場がなくなって、観光客が訪れることもなくなった
山中のそんな過疎の村:駒木野町。

「2030年、駒木野町人口ゼロ」という推定結果に抗うように、
奮闘する地元に残った青年クラブのメンバー、靖男や徳雄たちが主人公。

カラオケ大会で家付き一戸建てがもらえる!という定住者確保のための
イベントで駒木野町に住み着いた鏑木啓吾の存在が、触媒のように働いて
腹をくくった彼らは、一世一代の大勝負にでる・・。

主人公たちに時には訝られながら、へこまずマイペースの鏑木の
存在が楽しい。人間力とはこういうことかと思う。

昨夏に大手電機メーカーの工場閉鎖で解雇されて町に戻ってきた
民宿の2代目:木村厚、
評判の良い清水治療院の清水誠、
ガソリンスタンドの的場孝一。

外部からきて、駒木野町で経済基盤を気付いている牧場経営者の川崎、
ペンション経営の岡田、
石井課長をはじめとした役場の人たち、
30年以上前のスキー場在りし日の隆盛を忘れらない民宿村の長老たち

篠田節子さんの小説だけに、
周りの登場人物たちの輪郭が丁寧に形作られていて、
物語がすすむほどにリアリティのある世界が浮かび上がる。

時代は少し異なるけれど、田舎の生活は想像がつくだけに、
感情移入してしまう部分があった。

ライバルたる広上村や荒沢相手に、世代を越えて
一致団結しようとする終盤のシーンでは、その図が想像できて
笑ってしまった。

ラストシーンは・・
たぶん、篠田節子さんのなかで決まっていたんじゃないかと思う。

直木賞を受賞した「女たちのジハード」はNHKのドラマで見て
非常に面白かったのだが、この小説もドラマで見てみたいと思いました。