主人公の花ちゃん(女21)となごやん(男24)、
二人が博多の精神病院を脱走してからの
博多から大分(別府)をぬけて熊本(阿蘇)->宮崎->鹿児島まで、
マツダ・ルーチェでの1000kmの逃避行を描くロード・ムービーのような小説。
クルマでの行程が主のこういう小説って、
ありそうでそれほどなかった。
花ちゃんが幻覚・幻聴になやまされたり、
途中で薬を調達できて一息ついたり、病気の部分も
話の多くを占めているのだけれど、
クルマ好きの絲山秋子さんだけに
それもこのクルマでの逃避行を成立させるための道具だてかも
知れないと思う。
就職する前、熊本に住んでいた頃はバイクしか足がなくて、
(お金もなかったし)
ツーリングで長崎にいったくらいしか旅の思い出がない。
近年、里帰りしたときにつくづく思ったのは、
クルマがあると田舎の生活がこんなに便利だったのかということ。
巻末に、小説の二人の逃避行の行程ををなぞった九州の地図がのっていて
こういう旅もいいなと思った。
ずいぶんちがうものだと思っていたけれど、文字に起こすと
花ちゃんの博多弁って熊本弁とほとんど変らないのも
意外だった。