「八月のマルクス」で第45回江戸川乱歩賞を受賞した新野剛志さんの作品。
ある誘拐事件を軸に、物語は進む。
かなりのページ数のある小説だが、主人公の多田晶彦の視点で
丁寧に時系列に出来事がつづられていく。
主人公は特に、優れた力があるわけでもなく、スーパーマンのような
活躍をするわけでもない。物語も、リアリティというには
あまりに普通に制御されずに終わる感がある。
本作でも、主人公の抱えた心の傷にリンクして
社会へなげかけるテーマがあるのだが、
それについての結果や判断は読者自身にまかされることになる。
たくらみや仕掛けがないぶん、自然とはいえるのだが、
刺激はない。
ここ何作か、新野さんの小説を読んできて
それが新野流ハードボイルド?のスタイルかなと思うようになった。