初出誌一覧を見て、タイトルが「長い長い殺人」なのに
連作短編集なのか?と最初は思いました。
各章が、一連の事件につがなる各登場人物たちの”財布”の目線で
語られる、そんな小説。
語り手が、動物だったり、霊魂だったりというのは記憶にあるけれど
"財布"目線で書かれた小説(それも長編)は
初めて読んだ気がする。
でも、最初の章「刑事の財布」からひきこまれた。
面白かった、親しみを感じる。
2章の「強請屋の財布」の、派手な財布の話には
くすりと笑ってしまった。
子供のころは、いろんなものが
人間のようにしゃべることを想像していたってこと
あったんじゃないだろうか。
自分のそばにいて、自分の行動をずっと見ている彼(彼女)らは
いったいどんなふうに自分のことを思っているんだろう。
想像力の、懐かしくて基本的なところ。
この小説だけの設定が、
人間の犯した救いのない犯罪を、なぜだかやわらかく、
最後にちょっとせつなく描くことに成功している。
おもしろかった。なぜかちょっと癒された。
宮部さんの作品の中でも、大作でも話題作でもないけれど
おすすめです。