「背の眼(2004)」で第五回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した
道尾秀介さんの新作長編。
書名や装丁からしてなんとなく怖さを感じさせるイメージがあって
ちょっと敬遠したい先入観もありながら手に取りましたが、
プロローグからのリズムのある仕掛け(エンディングともリンクする)で、
スムーズに小説世界に没入できます。
心の傷や、かくれた真実、
そういうテーマが小説で扱われるようになってずいぶんたつ中で
どうしても刺激や新規性を求めてエスカレートする表現が、
読後感を悪くする場合があります。
主人公:姫川亮の回想の中で、
何度も匂わされる過去の”真実”が、形を変えていくところ。
小説中で『ラットマン』の絵の説明があるのですが、
まさしくこの小説のメインテーマだと、読了後思いました。
タイトロープを踏み外さない。
だからこそ、小説であるけれど、登場人物たちのリアリティを
強く感じました。
(おおげさに言えば)
今まで誰もできなかったことをやり遂げた作品かもしれません。
道尾秀介さんの新境地。おすすめです。
ぜひご一読を。