road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「ラットマン」道尾秀介/光文社

「背の眼(2004)」で第五回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した
道尾秀介さんの新作長編。

書名や装丁からしてなんとなく怖さを感じさせるイメージがあって
ちょっと敬遠したい先入観もありながら手に取りましたが、

プロローグからのリズムのある仕掛け(エンディングともリンクする)で、
スムーズに小説世界に没入できます。

心の傷や、かくれた真実、

そういうテーマが小説で扱われるようになってずいぶんたつ中で
どうしても刺激や新規性を求めてエスカレートする表現が、
読後感を悪くする場合があります。

主人公:姫川亮の回想の中で、
何度も匂わされる過去の”真実”が、形を変えていくところ。

小説中で『ラットマン』の絵の説明があるのですが、
まさしくこの小説のメインテーマだと、読了後思いました。

タイトロープを踏み外さない。

だからこそ、小説であるけれど、登場人物たちのリアリティを
強く感じました。

(おおげさに言えば)
今まで誰もできなかったことをやり遂げた作品かもしれません。

道尾秀介さんの新境地。おすすめです。
ぜひご一読を。