東野圭吾さんの新作長編。
父の死についてのわだかまりを心に抱えて、
医者を志した氷室夕紀は、
帝都大学病院、心臓血管外科で研修中に
事件にまきこまれていく。
医療の世界を描いたためか、最初は東野圭吾さんの
小説だということを忘れて没入していた。
丁寧に伏線が積み上げられて、事件の輪郭が次第に
あきらかになっていく構成の妙は、相変わらずのうまさ。
表題にある"使命"の意味があきらかになったときには、
ちょっとじーんとくるものがあった。
仕事や職業について、そういう意識をもって携われるなら
それは幸せなことだと思った。
東野圭吾さんの、一連の話題作について、
どちらかというと問題提起が残るというか、
心のどこかで素直に受け入れられない部分も残っていて
それが特徴にも思っていたけれど、
(心の痛みにも直結する部分だから、力があるのでしょうね。)
本作は、ひっかかりがなく気持ちよく読了できる点で大きく異なります。
何度も読み返して、
それぞれの登場人物の言葉や振る舞いや考えかたに
丁寧につくりこまれた東野圭吾さんの意思を感じました。
おすすめです。