雫井脩介さんの長編小説。
家に戻らず、行方のわからなくなった長男。
その友達の死体が発見され、事件に巻きまれたことがわかるも、
その背景も、加害者なのか被害者なのかもわからない。
親(父親、母親)として、家族(妹)としての気持ちの揺れ動きが
生々しくて、
ネットでの書き込みやマスコミ取材の様子は、
ごく抑えられた表現になっているものの、
当事者の感じる痛みを感じた。
ネットでささやかれるストーリーと
友達の見た実際、の証言とのちがいは小さなものかもしれないけれど
決定的な違いがあることが
最後にはわかるのだけれど、
それは小説だからできたことかもしれないし、
こんなふうには知ることができないものなのだろう。
自分の身の周りで起こったことだったらと思うと、
心が揺さぶられる。
事件の見方を、第三者の安全な立場から
想像力をもったものに変えていく、というのは
これからのネット社会で特に求められているものだと感じました。
派手ではないけど、
読んで良かった本、です。