作家の村上春樹さんが、
小説家という職業について
自分のこと、小説、自分の仕事について語ったエッセイ集。
小説の中の主人公に、
村上春樹さん自身の投影を想像してわかったいたような気に
なってしまったこともあるし、
発言などは割合取り上げられているような印象がありましたが
本書で初めて、そうだったのかと知ったことがありました。
特に印象に残ったところは3つありました。
一つは作品を仕上げていくその過程、練り方の深さ。
知ってしまえば当たり前なのですが・・。
そして
■第二回 小説家になった頃
学生時代に早くに結婚して、会社勤め経験を経ないでジャズ喫茶みたいなものを経営していた・・
断片的に知っていたそのイメージには、
余裕とか、自由とか、ゆるくpositiveなイメージしかなくて、それが小説を書くという行為に
結実していくのは自然なのだろうなと思っていたのですが、
もちろん経営というものが、そんなゆるいものであるわけもなく
その苦労も本書でもあえて具体的に書かないことで伺えます。
そして、村上さんが作家になる契機。
そうだったんですね。
いやそういうものなんだろうな、と納得しました。
■第十一回 海外へでていく。新しいフロンティア
海外でも多くのファンをもつ村上春樹さんの小説。
文体がどうとか、世界観がどうとか、
新作がでて、それが世界で待望されていたという紹介とか、
ノーベル賞が取りざたされるたびに
テレビなどでその理由が語られているのを聞くと
すんなりなるほどと受け入れてしまっていたのだけれど、
当たり前ながら、それは結果であるということであって
自然にそんな状況になることはないのですね。
対象が大きくなると、あたかも特別な奇跡や幸運がふつうに起きているように
思ってしまう。
それは心地よい錯覚なのだと思いました。
村上春樹さんの小説のファンでなくても、
現象としての村上春樹さんしか知らない人にも
おすすめです。