中島京子さんの長編小説。
おもしろかった、そしてほっこりした気分になった。
おすすめです。
歯科クリニックを「勝手に定年退職」して、今は義歯の製作を請け負う以外
悠々自適の隠居生活を送っている、緋田家当主:龍太郎 七十二歳。
妻の春子、介護ヘルパーの龍太郎の母、
三十を過ぎてひきこもりの長男を除いては
穏やかなはずの緋田家に舞い戻ってくる家族。
亭主の経営するベンチャー企業が倒産して戻ってきた長女家族、
売れない若手芸人との間に子供を妊娠して実家を頼ってきた次女、
ひとつひとつのできごとが、
普通の家族には大事件といえる事態、
当主である龍太郎の心は乱れるのだが。
濃淡はあれど、今では、普通の家族に起こり得ることなのかしれない。
各章、それぞれの登場人物たちの目線で描かれるストーリーは
つらいこともあるのだが、なんとか押しつぶされずにふんばっている
姿にほっとする。
そして、1年、そんな中ですこしずつ変わっていく。
終章の家族そろっての晩さん会のシーンそして半年。
家族というのは、よいものだと改めて思いました。