road2vのブログ - a little white rooster

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「永遠の0」百田尚樹/講談社文庫(2)

永遠の0」読了しました。

最後、すこしだけ涙がでた。

順序はばらばらに何度も繰り返し各章を読み返していると、
そこで語られる宮部久蔵の姿が、
わずかな時間軸の中で確かに生きていた生身の存在として
浮かびあがってくる。

ましてやそれが自分の祖父の姿であったなら・・

遠い昔のことのように思っていた戦争で死んだ日本人の
ことをこんなふうに感じさせてくれるというのが
すごいと思う。

この本が今の時代にかかれて、
そして文庫版が350万部も売れたというのは奇蹟のようなことだとも思う。

本書では、日本海軍の将官たちの無能さや卑小さ
特攻作戦自体がまったく意味のない作戦だったことへの
批判の言葉が冷静な視点で書かれている。

戦争が終わってそれまで称えていた戦場の英雄とその家族に対して
手のひらをかえすように態度を変えた人々や、参戦を礼賛して
国民を煽ったあげく、戦後自らを正義の代表のように態度を鮮やかにかえた
新聞社の姿がシンプルな事実として描かれているのだけれど
そんな小説の中のストレートな表現がもつ力についても驚かされた。

ネットでだれもが自由にどんなことについても語れるようになった時代に

自分の言葉や行動に責任をとらない口先だけの人間は、
どんなに糊塗しても、
その恥知らずの醜さを隠すことはできない・・・と思った。

作中の証言者である武田貴則が、特攻要員だった自分は
特攻隊員の本当の苦しみはわからないというシーンが
強く印象に残った。
実際にお金を払った読者の存在で実現された
350万部という数字は、重たいと思う。

最後に、文庫版の解説は児玉清さんです。

この作品とこの作品を生み出した百田尚樹さんへの
熱い言葉を読むと、児玉さんが亡くなる前にこの本に出会えて
よかった、そう思います。