桂望実さんの長編小説。
かつて
理想のユートピア・平等社会を目指して移り住んだ人たちに
開拓された、瀬戸内海に浮かぶ小さな島・鷹の島、
主人公は、
その島で生まれて育った芦田耕太郎。
平等に定期的に行われる仕事の抽選で選ばれて
島への移住候補者の勧誘係を始める。
理想的な島の生活に満足している彼が、
アンケートに答え、島の住民の総意で候補者に選ばれた
本土の人たち、
そして島を出てまた帰島したいと連絡をとってきた
かつて好きだった女性:礼子との会話を通じて感じるもの。
最初は、読んでいてこういう小説になるとは思わなかった。
特に、候補者で島への移住を断った
大型客船で働く柴田との交流がすごく暖かい。
頼まれて描いた絵を喜んでもらえたところをきっかけに、
始まる変化、気持ち。
そして主人公の新しい一歩。
今、こんな時代だからこそ
理想社会は魅力的なのでけれど、
そこであえてこの小説は、魅力的だった。