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「極北クレイマー」海堂尊/朝日新聞出版

海堂尊さんの長編小説。

舞台は北海道・極北市、人口10万の地方都市で
赤字で廃院の危機下にある極北市民病院。

極北大から、非常勤(ボーナスなし)待遇で派遣された
新任外科部長:今中が主人公。

近年、医療に関しての問題提起を大きなテーマとして作品を発表している
海堂尊さんが今回選んだのは、地方医療の問題、その現場での医師たちの姿、
そして、他の小説でも語らえていた”医療事故”による医師の逮捕事件。

医者という存在への古くからのイメージ、
エリートだったり、お金持ちだったりというものが、
ちがうんだということは最近のTVドラマなどでも
取り上げられるようになっているけれど、
現役の勤務医でもある海堂尊さんの小説のリアリティは貴重だと思う。

チーム・バチスタの栄光」に連なる一連のシリーズの読者なら、
なじみの人物たちが、エピソードの中でちりばめられて、
こんなふうにつながっていたのかと、その世界を広げる作品でもあります。

今までのシリーズ作品の強烈なキャラクターの中では、きわめてまじめで朴訥な
印象がある、主人公:今中医師は、その分読者には共感できる存在。

実際、ストーリーを抜書きするとあまり明るくない話の中で
読んでいて、和むというか勇気付けられる、そんな小説でした。

エンターティメントとしてのハイライトは、
風のようにやってきて、わずか3日で嵐のような大きな変化を
極北市民病院にまきおこして帰っていった、あの”姫宮香織”の活躍! 

おもしろかった!
(登場するページ数は、実際小説の何分の一なのに)
彼女の魅力が、最大に表現された小説かもしれない。

姫宮の言葉の中にしか登場しない白鳥の存在感が、
病院関係者に与える影響にも笑ってしまった。

チーム・バチスタシリーズの作品をある程度読んでから、
読むと、より楽しめます。 おすすめです。