第54回江戸川乱歩賞受賞作。
プロローグは、昭和21年8月、終戦から間もない東京、ヤミ市での
誘拐事件の身代金受け渡し現場。
本編は、その15年後、
主人公の母親の死、相次いで起きた殺人事件がやがて
つながってひとつの絵を描き始める。
時代設定が昭和36年というのが、
今までミステリであまりなかった。
私自身、引越ししてその後環境が変わったこともあって
昭和40年代半ばの町並みや生活のことはかなり鮮明に記憶しているのだけれど、
貧しさが日常的だった時代の母親の苦労というのが
現代小説とはとはちがう特別な味あいをだしていると思った。