学生時代に、
FMラジオドラマで「成吉思汗(ジンギスカン)の秘密」を
偶然聴いて、そのおもしろさには引き込まれた。
その後読んだ原作(高木彬光さん)もまたドラマ以上で、
それ以来『義経北行伝説』は、邪馬台国ものと並んで
特に好きなテーマです。
とはいえ、時間ものとは違って
さまざまなバリエーションがとれるわけではないので
新たな作品にふれる機会も限られるし、
既刊の作品も逆にあえて急いで読了したいとも思わないところが
愛好家(ファン)心理の微妙なところです。
長い時間をおいて、ようやく手に取った本書。
『義経北行』の動機の部分への言及が
新鮮で、”なるほど~”とこれは今までなかった視点で
面白かった。
ヨーロッパ・ロシアにおけるジンギスカンの位置づけについては、
『義経北行伝説』とは別に書かれることも増えていますが
(島田荘司さんの近著にもあったかと思います。)
上記とあわせて二つの新しい視点が盛り込まれた
小説として従来作とはまた違う魅力があります。
惜しむらくは、中津文彦さんのデビュー作にして
江戸川乱歩賞受賞作「黄金流砂」以来の再会になった
法願の活躍はもうひとつだったのが残念。