road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「楽園 上・下」宮部みゆき/文藝春秋

あの「模倣犯」事件から9年。

依頼者:萩谷敏子が持ち込んだ交通事故でなくなった10歳の息子の遺した絵。
知りえないはずのことが描かれた不思議な絵をめぐって、

心の痛手をひきずりながら
ライターとしての仕事をようやく再開していた前畑滋子が、
再び新しい事件とかかわりあう。

メモをみると、「模倣犯」を読んだのが2002/9。
物語世界とリンクした時間経過の感覚が共有でき、
単独の小説以上に楽しめた。

宮部みゆきさん、上手いと思う。

正直、「模倣犯」での前畑滋子はたよりなさや
物事に翻弄されるような弱さにやきもきさせられて
(もちろん、それは創作上の設定ですが)
最後の大逆転のシーンを経たあとでも、主人公として好きとはいえなかった。
本作の主人公が前畑滋子であると知ったときも、それほど魅力とは思わなかった。

それが・・
本作で、事件を乗り越えて強くなった前畑滋子の姿をみて、
ああ、そうなんだよなと思った。
(本作でも健在の夫とも一緒に年をとっていきながら、)
経験を積み重ねて、人はおだやかに成長していくということを
あらためて再認識して、

小説の中とはいえないような親近感を覚えました。

(事件に焦点が集まる中で、土井崎夫婦や、萩谷敏子さんはじめ
 登場人物たちの背景を丁寧に構築する上手さには脱帽です。)

新しいシリーズとして、また新作を読みたいと思いました。

# 大長編なので大変ですが、本作を読む場合はやはり「模倣犯」から
 よみ進めることをオススメします。