road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「借金取りの王子」垣根涼介/新潮社

日本ヒューマンリアクト(株)で働く村上真介が主人公の連作長編。
君たちに明日はない」に続くシリーズ2作目になる。

リストラの退職勧告を請け負う仕事、そんな設定だけに
各編の対象者たちの人生の濃淡が浮かびあがって、
いろんなことを考えさせられる深さがある。

不覚にも、表題作の「借金取りの王子」を読みながら
電車のなかで少し涙ぐんでしまった。
こういう絆で結ばれる夫婦関係はいいなと思う。

前作で付き合うようになった年上の恋人・陽子との
相変わらずのやりとりにはニヤリとさせられる。
真介の乗るシルバーのCOPEN(コペン)も健在。

ヒートアイランド」から始まった"ギャングスター”シリーズでも
そうなのだが、垣根涼介さんがクルマ好きなのがよくわかる。
小説の中での、クルマの描写がとても魅力的で、自然と微笑んでしまう。
シビックタイプRのHPでも、垣根涼介さん作のショートストーリーが
 掲載されていて、ホンダもわかっているなと思った。
  かつてクルマが若者の憧れだった頃には、こういうストーリーが
  皆の心の中にあったような気がする。}

前作を読み終わった時に、きれいに閉じた作品になっていたので
シリーズ化されるとは思わなかった。
読んでみて、前作での真介のイントロダクション的な部分が終わった分、
真介や陽子との会話も通じて、真介が面接することになる対象者の
人生を掘り下げていくスタイルは、いいなと思った。
小説の中では、しょせん真介は傍観者でしかありえない現実も
きちんと表現されている。

このシリーズもまた、読み続けたい作品になった。
次作も楽しみです。