楡周平さんが、アメリカでの陪審員制度をテーマに
初めて描いた法廷もの。
アメリカで起きた日本人の少年ケンイチ・マキタによる殺人事件。
アメリカ特有の陪審員制度、
それに初めて召還された60歳の日系人:由紀枝・テンプル。
大きく二人の目線で物語は進む。
陪審員制度を主軸においた小説としては、J・グリシャムの小説が
何作か記憶に残っているが、それに比べると
ページ数も限られているし、こじんまりとした印象はある。
今、この時期にというのは、
日本でも導入が検討されている”裁判員制度”が意識にあってのことだと思う。
だから、本作で12人の陪審員たちが論議を進める中で、最後に評決を決める
にいたった考えが、たぶんこの小説のKeyなのだと思う。
架空の陪審員制度を題材にした映画、
三谷幸喜さん原作の「12人の優しい日本人」は
好きな映画のひとつなのだが、
日本に陪審員制度を導入する点については
難しいというか、問題があるよなあと思っていた。
ただ、この小説で書かれているようなことが、
陪審員に評決をゆだねる根拠であるなら、
それは、必要なことかもしれない。