「光る鶴」
「吉敷武史、十八歳の肖像」
「電車最中」: 文庫書き下ろし
の3編を収録。
読み始めて、「あれ・・これ読んだことある」と思ったら
前半、2作はカッパノベルス「吉敷武史の肖像」2002からの
収録でした。
うれしかったのは文庫書き下ろしの「電車最中」、
「灰の迷宮」で吉敷武史に協力してくれた鹿児島県警:留井刑事の活躍と
10年ぶりの邂逅。
留井刑事の青春時代、警察官になる前の東京での切ない思い出にも
ふれられていて、
吉敷が刑事をめざす契機になる「吉敷武史、十八歳の肖像」とあわせて、
仕事についてはそれぞれプロフェッショナルである二人、
彼らの友情への理解も深まり、すこししんみりしながら
読みました。佳作です。
そして、山下幸夫氏(弁護士)によるあとがきは、
島田荘司さんの死刑や冤罪についての”活動”について詳しく解説されていて、
「電車最中」とこのあとがきだけでも読む価値があります。
これもあとがきを読んで気づいたのですが、
「電車最中」のなかで警部の階級で登場する吉敷は、
「涙 流れるままに」の後日の姿なんですね。
(最後に警部昇任を上司から告げられる印象的なシーンがあった。)
時系列では「龍臥亭幻想」もそうなのだけれど、
吉敷の消息としてはそれほど踏み込んだ
印象的な描写もなくて残念に思ったものです。
「涙 流れるままに」出版が1999年だったと知って、
そんなに時間がたったのかと驚きました。
{ 個人的には、転勤や転職で2度の引越しも経験してとても
変化の激しい時間でした。}
また歯ごたえのある本格的な吉敷武史ものを読みたいという
気持ちが強くなりました。
2007年の島田荘司さんの新作、
期待しています。
(そのうち犬坊里美とも会うかもしれませんね。)