京極夏彦さんの本を読むのはひさしぶり。
(「陰摩羅鬼の疵(おんもらきのきず)」以来になる。)
京極堂こと中禅寺秋彦、榎木津礼二郎、
そして関口巽、変わらぬメンバーにそして
かつての作品で登場した多くの人とまた再会する。
シリーズものというのは、どちらかというと独立して
並列に物語がなりたっているような、そんなスタイルをとる場合が
多いと思う。
(そうでなければ、書き続けられないとか、
作品世界が煮詰まってしまうとか理由は想像できる。)
それとは完全に逆をいく、それなのに
過去の事件の背景や、登場人物たちがそれぞれ
存在感をまして、物語世界の深みや彩を増していく。
それが、
京極夏彦さんのつむぎだすエンターティメントがもつ
独特のすごさだと思う。
「絡新婦の理(じょろうぐものことわり)」以降、
どれだけ分厚い本を見ても、なぜか読みやすくわかりやすく
最後まで裏切られないというはずという、期待を持つようになった。
そして、また本作も本当にそうであることを再確認して、
また驚いている。(「塗仏の宴」もそうだったなあ。)
妖怪や魑魅魍魎、古典の膨大な知識、
独自の世界感は
そんな道具立ての上でしたなりたたないのか?
そうではない、
一流のエンターティメントはそうではない。ということを
京極夏彦さんは証明している。
この作品は、京極堂シリーズの最新作にして、
ある種の集大成のような作品。
これまでの京極作品をあらかた読んでからのほうが
ずっと楽しめること、保証します。