直木賞候補作になった三崎亜紀さんの長編小説。
30年に一度おこる町の"消滅"。
人々から忌み恐れられる"それ"で大切なひとを失った登場人物たちが、
出会い、係わり合い、そして
次の”消滅”をふせぐためにたちむかう。
今まで、比較的みじかめの小説を書くというイメージが強かった
三崎亜紀さんだが、本作では30年もの時を越える長編を
完成させた。
短編をつらねて、大きなイメージをつくりあげる小説は
いくつもあったと思うけれど、
本作はそれぞれのストーリーの登場人物たちが
強く有機的にむすびついていく様子が独特の魅力を
かもし出している。
読んでいる最中から、何度か振り返って読み直していた。
読了後、再読するとまた別の味わいが楽しめる。
"消滅"はともかく、
”分離者”の存在や”澪引き”"古奏器"など、
SFファンタジー的な魅力的な仕掛けはふんだんに盛り込まれている。
だが、やはり本作の魅力は登場人物たちの造詣にある。
戦場カメラマンの脇坂
俳優になった長倉勇治
白瀬桂子に茜、由佳
二人のひびきにのぞみ
高校生の頃からの
（サカガミ）由佳と（ヨコヤマ）勇治のエピソードなどは
せつない青春小説的な色合いもあって印象的だった。
茜のまっすぐな目線は、ほっとさせられる。
余談だが、
装丁がちょっと変っていて
シンプルな仕掛けなのに、いい味を出している。
