表題作「霧の中のエリカ」
「天使の階段」の2作を収録。
過去に戻れる媚薬を持つ娼婦・なぎさ。
選ばれて彼女を買った男は、過去に戻って愛する女性を救う。
”なぎさの媚薬”シリーズを読むのは初めて。
重松さんがこういう小説を書いているのも知らなかった。
描写が濃密なので、これは中学・高校の図書館などでは
おけないだろう。(週刊ポストに連載されているシリーズのようだ。)
とにかく表題作は、衝撃的だった。
重く、痛みがひどく、つらく悲しくて、
読んでしばらくその感覚を引きずってしまった。
(もはやエンターティメントとはいえないと思った。)
これにくらべれば、これまで読んだいくつかのクライムノベルは、
結局エンターティメントだったのだとさえ思ったくらい。
主人公:邦彦が過去に戻り、そしてエリカは
確かに救われたんだなと思えるようになったのは、
しばらくたってようやく読み返してからだった。
今は、
この救いがベストだったのだろうなと思えるようになってきた。
おすすめとは言わないし、言えない。
読んで、救われる人と何かを得る人はいるだろう。
表題作の後では、「天使の階段」は
ライトな小説にさえ思えてしまった。
本当は、「その日のまえに」に通じるような重松さんの主要なテーマに
を扱った小説なのだろうけど。
おかげで立ち直った。
このカップリングはよいかも知れない。