road2vのブログ - a little white rooster

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「水銀虫」朱川湊人/集英社

7編からなる短編集。

「枯葉の日」
「しぐれの日」
「はだれの日」
「虎落(もがり)の日」
「薄氷(うすらい)の日」
「微熱の日」
「病猫(やみねこ)の日」

朱川湊人さんの小説は2005年直木賞受賞作の「花まんま」以来2冊目。

はっきりと説明されるわけではないが、表題の水銀虫という甲虫が
何篇かで存在をかすかにうかがわせている。
とはいえ、特に説明されるわけでなく??と思った。

恐怖譚なのだが、「花まんま」と違いファンタジー色や奇譚色もなく、
人の心の暗さ・弱さや、狂気による怖さで読後感が非常に悪い。

あえてよい点を探そうとすれば、後悔しないように
~するな、という教訓めいた感触が残るところだろうか・
それが朱川湊人さんの狙いかもしれない。

かつて童話や昔話には、こども心に怖さを通して何かを教えようとするものが
いくつもあったことを思い出した。
この本では、オブラートにくるむような配慮もなく
小さい頃にこんな話を聞かされたら、夜ねむれなかっただろう。

最近またいじめによる自殺の話題がニュースで取り上げられるようになっているが、
本作の「薄氷(うすらい)の日」を読めば、
いじめに加担して、その後そ知らぬふりで平穏に生きていくことなどできないと
心底感じるのじゃないだろうか・・ と思った。

{「枯葉の日」もそう。}