こういう設定で物語をかけば、面白くなるだろうというアイディアはあると思う。
けれど、実際にそれで面白い小説がかけるかというと・・
それはとても稀有な奇跡的なことだ。
本作は、「都立水商!」「ドスコイ警備保障」でその偉業を成し遂げてきた
室積光さんの新作。
とはいえ、
自称じゃないのか?の主人公スパイ:田畑、
CIAのレイバン軍団。
美貌のKGB女スパイ。
さすがにB級すぎる基本設定にこれはちょっとと
思いながら読み進めた。
ときに腰砕けしたり、妙にシリアスな述懐にとまどったり、
起伏のゆたかさに、身をまかせているうちに
ほろりときたり、しんみりさせたり、室積ワールドは健在。
物語の舞台となる時代が、昭和40年前後に設定されているのが、
意図的で効果を発揮しているのだろうなと思った。
物語の中盤からは主人公の田畑がとても格好よく見えてくる。
最後の方では、尊敬の念も覚えるほどに。
小学六年生の娘・恵子の振る舞いがまた健気で良い。
こういう設定で物語をかけば、面白くなるだろうというアイディアはあると思う。
それを実現した作品。(ほめすぎか?)
ある意味、映画「Always 三丁目の夕日」(未見ですが。)のような、
昭和のノスタルジーを懐かしく味わえる作品かもしれません。